カテゴリー:起業
2025年05月26日 投稿者:八田さと子
小川町駅から歩いて10分。
古い木造家屋が静かに並ぶ北裏通りから、一本奥に入ると一軒のビールパブがある。
その名は Ogawa Public House “Chug”。カウンターに立つのは、30歳のマスター・大塚芳樹さんだ。
「正直、若い頃は“ダサい田舎”って思っていました」
そう笑う大塚さんは、小川町で生まれ育った。高校卒業後、町を離れ、都内のカフェへ。5年間の勤務で料理の基礎とサービスの流儀を学び、やがて強く惹かれていったのが“ビール”だった。
もっと美味しく、もっと心地よく。
理想の一杯を求めて、ビールパブで経験を積む日々。そんな折、居酒屋の店長として広島へスカウトされる。挑戦だった。
しかしそこで直面したのは、利益重視の経営と、自分が思い描く「ビールの楽しさ」とのズレだった。
「売上は大事。でも、それだけじゃない。ビールって、本当はもっと自由で、もっと楽しいものなんです」
1年半で広島を離れ、再び東京へ。
納得できる一杯を追い求めながら修行を重ね、2023年、ついに故郷へ戻ってきた。同級生とともに立ち上げたのが、“Chug”だ。
東京での生活は刺激に満ちていた。
流行、情報、人の多さ。学ぶことも多かった。
それでも、大塚さんの中に違和感が残った。
「便利で楽しい。でも、小さなストレスが積み重なって、気づけば心も体も疲れていた。自分が“人間らしく”生きられる場所はどこだろうって考えたとき、やっぱり小川だったんです」
もちろん、田舎暮らしが楽園というわけではない。
濃いご近所付き合いもあれば、車がなければ不便なこともある。
「都会にも田舎にも、メリットとデメリットがある。大事なのは、自分に合う場所を見極めることだと思います」
穏やかな口調の奥に、遠回りをしてきたからこその確信がにじむ。
“Chug”は、単なるビールパブではない。
大塚さんが描いているのは、町全体の循環だ。
「小川町には、有機野菜をつくる農家さんがたくさんいる。その価値をもっと発信して、町のブランドとして高めていきたい。価格が上がり、雇用が生まれ、町でお金が回る仕組みをつくれたら」
まだ具体的な形は模索中だというが、それを語る彼が見つめる先には、同級生の有機農家さんの顔があるに違いない。
かつて“ダサい”と思っていた町で、
今は自分の理想を形にしようとしている。
小川町には大塚さんと同世代のUターン起業者が少なくない。
彼らの覚悟に触れ、「小川町のこれから」に期待が膨らんだ。
Ogawa Public House “Chug”
場所: 埼玉県比企郡小川町大塚28 2F
電話番号: 070-3346-3421
Instagram: https://www.instagram.com/chug_ogawa/
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